13 June 2004

走り出すか叫びたく

雨が得意な人はいないと思うが好きという人はいるかもしれない。『銀河鉄道999』の鉄郎を思い出す。鉄郎は雨が嫌いで、その理由は屋根の保証がない状況に育ったからであり、同時に「雨が好き」という人を信用しない、そう描かれていたと記憶している。


かく言う自分も雨が苦手な一派だ。幸い屋根がある環境に育ったが、外に出なければならないと思うと途端に気が重くなる。中途半端に濡れるのが嫌なのだ。雨の日はアンニュイ、あるいはショパンの調べ、なんて書くと年がバレてしまうが(特に隠してないが)、まさか「中途半端に濡れるから」という理由で憂鬱なのではあるまい。なんとなくだろう。気分なのだろう。
では中途半端ではなく、全濡れになったらどうか。こうなると意見は翻って、すごく雨が好きになる。台風などもエキサイティングだ。くらもちふさこの『天然コケッコー』で、台風の日に(不謹慎と知りつつも)外ではしゃぐというエピソードがあるのだが、自分はこれを読んでいてもたってもいられなくなり、次の台風には是非にとまで思ったのだが、実際台風の季節には思いとどまった。状況が許さない時が多すぎる。大人はたいていの場合、服のまま濡れてはならないのだ。
数年前の夏、土砂降りの日に傘がない状況に遭遇した。自宅最寄りの駅で電車を降りたら突然降り始めたのだった。もうその日は帰って飯食って寝るだけの状況だったので、これ幸い。「濡れてもいい状況」が到来した。自分は脱いだ上着で携帯電話と財布をくるんでバッグに詰め込み、家に向かって歩き出した。
その時のここちよさったらなかった。しょんべんちびるかと思った。脳内で禁止されていることを破っているということと、大きな雨粒が絶えずからだを打ち遮断される五感。ふつふつと何やら解らない感情が盛り上がってきて、走り出すか叫びたくなるくらいだった。
状況が許す限り雨は素敵だ。
いつかそういう気分を映画にしたいなと思っていて、なかなか叶わずにいる。

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