19 September 2004

165回目のバ〜カ☆



川崎市市民ミュージアムにて「谷岡ヤスジの世界展 -- 天才キャラクターだもんね!」を観てきた。
「手塚治虫作」ということを誰もが一度は疑うだろうキメラ土偶(光る&鳴る)の背後に漫画ブースはある。常設展示されている、というかもはや設備の一つである「まんがの歴史をパネルの出し入れによって解説する機械」に子どもたちが大はしゃぎしている以外の客は自分一人。この機械、「一度パネルを出したら5秒間は次のパネルを出さないで下さい」と注意書きがしてあるため、子どもらはボタンを押した次の瞬間から「いーち、にーい」と声に出して数える。パネルは全部で30〜40枚はあろうか。その声が鑑賞のBGMであった。よく教育された子どもたちである。ちなみに隣の企画展示室では「本居宣長展」を開催中だった。件の金印の本物があるそうだ。


手塚治虫作オブジェの他に目に付くのは、谷岡さんおなじみのキャラクターを拡大したパネル、の下に文字。「長谷川和彦・室井滋寄贈」「工藤夕貴寄贈」「東宝6期ニューフェイス一同寄贈」とある。なんのことやらさっぱりわからない。記念の花輪か何かに掲げられていたものだと思うが、谷岡ワールドの投げっぱなし感に非常にマッチしているような導入であり、期待は膨らむ。
壁面には、これでもかという数の生原稿の数々。一話まるごと(といっても10Pにも満たないものばかりだが)というような原稿が簡単な説明とともに飾られている。感動である。もちろん近寄って舐めるように見まくる。自分は驚いた反面納得したというのは、谷岡さんは普通に鉛筆で下描きをしていたというところ。もちろんペンの線は迷いなしといった感じでほとんど一発で描かれているのだが、コマの中のキャラクターの入り位置など試行錯誤していることが見える。中には原稿の裏にボツにしたオチのネームが描かれているものさえあり、もう、たまらないのである。生アサー。生ペタシ。生鼻血ブー。枠線外の自筆生落書きもそのままである。自分は絵画を見るように一枚一枚見てしまったのだが、それはまんが原稿である手前同時に読まなければならず、脳を過剰に運動させてしまいぐったりと疲れる。
他の展示物では金属製「ペタシ像」という雑誌のノベルティがあり真剣に欲しくなったものだが、やはり驚愕の一品は谷岡さん本人のスケジュール帳だった。「帳」ではない。巻き物なのである。
縦幅が葉書大の紙をとにかく横に長く繋げて日付けが手で書いてある。日付けの下に掲載誌とページ数。おそらく終了したら赤く塗りつぶすことになっているのだろう。1月4日以降はほぼ毎日〆切。中には一日に3本の〆切があったりする。休日は月に2日あるかないか。脳から特別な液が分泌されていないと消化することは困難だと思われる。これくらい予定が埋まると脳はどんな状態になるのだろうか。今の自分には想像もつかない。

ものすごい満腹状態になり、もう当分生原稿は堪忍、と思いつつミュージアムを出る。外は肌寒く秋空。自分はひとつ理解した。俺はまんが家にはなれない。と。いや、仮令なれたとしても売れっ子にはなりたくない。いやなれなければ困る。こころは千々に乱れる秋の空。なぜか傍らにはひまわりが咲いていた。

今月20日(もう明日だ!)には宇川直宏+DJ TASAKAライブ・パフォーマンス「ヤスジ・鳥ビューッと!!!」が行われるという。しかもタダ。べつにまわしものではないが激しく推したい。自分も行くかも。

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