すでにいない草太兄ちゃんのために
コドモのコドモ 1 (1) さそう あきら 双葉社 2005-01-28 by G-Tools |
遅ればせながら全巻読了。徹夜明けで、眠る前にちょっとと思って読み始めたところ、なぜだか胃が痛くなって眠るどころじゃなかった。胃痛は体の無理がたたったせいではない。このまんがのせいだ!もう大変だよ!
あとがきによれば、
「小学生にコドモを産ませてくれませんか」
「漫画アクション」復刊にむけて新連載のお話をいただき、
編集部から、いきなりぶっそうな提案をもちかけられました。
…と、まるでコンビニにおやつを買いに行くような気軽さで作品を依頼されたことが書かれているが(いや、まあそんなわけないんだろうが)、これは企画ありきの作品だったと知れる。ネタを振られてここまで構築できる力が真似できないというか。登場人物が誰一人遊んでない。全員ががっちり物語に関与している!しかも胃が痛くなるほど切実に。
思えば『北の国から』というドラマのほぼ終盤、岩城滉一演じる「草太」がある重大な秘密を抱えたまま「口封じ」されるのだが、自分は脚本家によるこの行為が許せず一気に冷めて、もう『北の国から』追っかけるのやめようかなとさえ思った。そんな簡単でええのんか?とインチキ関西弁で思った。べつにあそこで草太は死ななくてもよかったのではないか、というか、最も劇的かつ効果的、王手飛車取りみたいな華麗な方法を使ってまで機密保持させなくてもいいだろうと思ったのだった。もっと冗長にだらだらと草太を黙らせる方法は、あの脚本家ならいくらでも思い付くはずで、えーとつまり尺の問題?などと邪推し、がっかりしたのである。
『コドモのコドモ』でも終盤、やはり重要な秘密を握った人物が死ぬ。ところがこの件に関しては自分、一切文句が出なかった。なんというか、唐突かつ自然なのである。それとはまったく気付かない微かな伏線とNO前兆、まるでそこで天が決めたかのようにふっと息を引き取るのだ。十分「ありえる」死に方で、最悪のタイミングで。
物語る人の思うところは一緒だろう。なんとかして秘密を持続させなければならない。このへんでこのキャラを退場させたい。こういう作為をいかに感じさせないかが演出者の腕の見せ所だと思うのだけど、『コドモのコドモ』では全てが(人の運命やら選択の余地さえも)緊密に織り込まれているため作為を非常に感じにくくなっている、と思う。
まあつまり自分はこのお話に翻弄されまくって没入しまくってしまったというわけで。
でもキャラクターの誰にも感情移入は一切できない、というのがこの作家の特徴なのだろうと思う。完全に世界をコントロールしてる感じ。
これだけよくできたお話ならばそのまま映像化…とかすでに進んでるのかもしれないけど(知らないけど。倫理的な問題はどうなのか)、どっこいまんが純度も非常に高く、まんがでしか表現できない物語でしょう。
Posted 01/24/06 | Filed under: 感想
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