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その、手の話

自分が1996年に初めてPFFに出品したのは『手の話』という16mm映画で、もうこの映画にはあんなことこんなこといっぱいありずぎて、「その手の話は…」とかいう文字を見るだけで甘酸っぱい思い出が走馬灯のごとく蘇るんですが、その『手の話』で自分とスタッフは「キャスティング・技術賞」というプライズを頂きました。いまでいうスポンサー賞のひとつです。つまりその賞の本名は「JS賞」。
ここからが本題なのですが、自分はもう賞を頂いたことで舞い上がってますからもう副賞とかなんてあろうがなかろうが歓喜と感激でくるくると舞い踊ろうってなもんですが、ちょっと冷めると気になるもんです副賞。
頂いたのは「インターネット1年間使用権」でした。Jネットのインフラを使わせてもらって、メアドももらって、確かそれとは関係ないソフトウェアもいくつか頂けると聞きました。ATOKとかでしょう。一太郎とかでしょう。
ただひとつ問題があったのですが、当時自分はパソコンを持っていなかったのです。インターネットは憧れの世界でした。Eメールだって!すげー!もう切手いらないんだ!くらいのレベル。パソコンはもちろんいずれ買うつもりでした。しかし買う「つもり」であって「予定」ではない。
そんな自分の貧相な環境を、自分は担当者の方に、十分に気落ちしながら伝えました。担当者の方は、「そうですか…もしそうだったらという危惧はあったのですが…」と本当に残念そうにしてくれました。

でも自分には希望がありました。この副賞の有効期限は実質ないのだろうと。いずれ自分がパソコンを買った暁には、まだちょっと高価なしろものだったインターネット接続権を行使し、Eメール送りまくったり、検索してみたり、そうホームページ!略してぽむぺげ、作ろうじゃん!などという希望です。ひとりよがりな希望です。
しばらく後、担当者(当時)の方から小包が送られてきました。少し持ち重りのする、ソフトの箱にしてはやや寸胴な箱でした。これでインターネットに繋ぐのか?それともあの「モデム」とかいうやつだろうか、と。
開けてみると、それはビアマグでした。瀬戸物の。JS社は徳島に本社を置いており、確か大谷焼は特産です。短いけど心のこもったメッセージが添えられていました。ああ、もったいない。

自分はほとんどお酒を飲まないので、ビアマグはずっと仕舞ってあります。

自分はそれから数年も経って、ようやく自分専用のパソコンを導入し、自腹でインターネットに接続して、この文章を書いています。いまふと気になったのは、JS社の担当者の方のことです。あたたかいメッセージありがとうございます。PFFとJS社の提携期間は終わってしまいましたが、まだ在籍されてるのでしょうか。覚えておられますでしょうか。ぶっちゃけあの副賞はまだ生きているのでしょうか…。

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