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すでにいない草太兄ちゃんのために
遅ればせながら全巻読了。徹夜明けで、眠る前にちょっとと思って読み始めたところ、なぜだか胃が痛くなって眠るどころじゃなかった。胃痛は体の無理がたたったせいではない。このまんがのせいだ!もう大変だよ!
あとがきによれば、
「小学生にコドモを産ませてくれませんか」
「漫画アクション」復刊にむけて新連載のお話をいただき、
編集部から、いきなりぶっそうな提案をもちかけられました。
…と、まるでコンビニにおやつを買いに行くような気軽さで作品を依頼されたことが書かれているが(いや、まあそんなわけないんだろうが)、これは企画ありきの作品だったと知れる。ネタを振られてここまで構築できる力が真似できないというか。登場人物が誰一人遊んでない。全員ががっちり物語に関与している!しかも胃が痛くなるほど切実に。
思えば『北の国から』というドラマのほぼ終盤、岩城滉一演じる「草太」がある重大な秘密を抱えたまま「口封じ」されるのだが、自分は脚本家によるこの行為が許せず一気に冷めて、もう『北の国から』追っかけるのやめようかなとさえ思った。そんな簡単でええのんか?とインチキ関西弁で思った。べつにあそこで草太は死ななくてもよかったのではないか、というか、最も劇的かつ効果的、王手飛車取りみたいな華麗な方法を使ってまで機密保持させなくてもいいだろうと思ったのだった。もっと冗長にだらだらと草太を黙らせる方法は、あの脚本家ならいくらでも思い付くはずで、えーとつまり尺の問題?などと邪推し、がっかりしたのである。
『コドモのコドモ』でも終盤、やはり重要な秘密を握った人物が死ぬ。ところがこの件に関しては自分、一切文句が出なかった。なんというか、唐突かつ自然なのである。それとはまったく気付かない微かな伏線とNO前兆、まるでそこで天が決めたかのようにふっと息を引き取るのだ。十分「ありえる」死に方で、最悪のタイミングで。
物語る人の思うところは一緒だろう。なんとかして秘密を持続させなければならない。このへんでこのキャラを退場させたい。こういう作為をいかに感じさせないかが演出者の腕の見せ所だと思うのだけど、『コドモのコドモ』では全てが(人の運命やら選択の余地さえも)緊密に織り込まれているため作為を非常に感じにくくなっている、と思う。
まあつまり自分はこのお話に翻弄されまくって没入しまくってしまったというわけで。
でもキャラクターの誰にも感情移入は一切できない、というのがこの作家の特徴なのだろうと思う。完全に世界をコントロールしてる感じ。
これだけよくできたお話ならばそのまま映像化…とかすでに進んでるのかもしれないけど(知らないけど。倫理的な問題はどうなのか)、どっこいまんが純度も非常に高く、まんがでしか表現できない物語でしょう。
01/24/06 | Category 感想
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塚本晋也監督『HAZE』
試写で拝見。
RISE Xにて。
『ヴィタール』のDVDを作るときに塚本監督にインタビューしたのですが、「肉とコンクリートしか撮ってない」と聴いてました本作。もうその通りでした。のっけから役者塚本さんの大絶叫が聞けました。久しぶりです。ビバ絶叫です。
自分が想像する最も嫌な死に方のベストテンにランクインするもので「狭い空間に挟まれたまま身動きできず餓死」というのがあるのですが、『HAZE』はそんな自分の恐怖を逆撫でするかのようにきゅうきゅうに狭い映画でした。あと暗いしすごい匂いそう。導入がまるで夢のように不条理なこともあいまって、最悪です。いえ、負の最高です。
また劇場であるRISE Xが映画と同じくコンクリート打ちっ放しで配管とか剥き出し内装なもので、まるでスクリーンの中は劇場の一部みたいな錯覚も起こり、鑑賞中何度か周囲の様子を確かめました。そしたら塩田時敏さんがおられたので、ああここは映画館なのだなと安心したものです。閉所恐怖症の人は最大限の現実感覚を発揮して観ないと大変なことになると思います。
DVX-100Aで撮られてビデオのまま上映される本作ですが、重要なファクターである「闇」は非常によく締まっていましたし、言わなければビデオだとは気付かないかもです。プロジェクターの質ももちろんですが、やっぱライティングの妙か…と勉強もさせて頂きました。
あと、もしこの映画の閉塞感を最大限楽しみたいという方は、自分が座った席がいいのではないでしょうか。見取り図を入手できなかったので簡単に記しますと、RISE X入って中央一番右。シートの列からひとつだけ離れて孤立した座席があります。右はすぐコンクリートの壁。スクリーンは全貌できるものの右前方には壁の出っ張りと配管。まるで自分だけ隔離されてる感が味わいまくれました。ぶるる。
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HAZE official
01/18/06 | Category 感想
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リアルコマ撮り映画とか
PATRYK REBISZ : Between You and Me
非常に巧みな短編映画。リンク先で小さい画面の本編が観れます。
このカメラで撮ったらしい。クレイアニメなんかを一眼レフデジカメで撮るという話は聞いたことがあるけど、ハンディでやるっていうのは盲点だった。映像がすごいキレイなのにコマ落ちしてるっていう面白い効果。小さい画面なんでわかりにくいけど、このレンズのボケ味とかはいまのDVカメラじゃ出にくいかも。
手法もおもろいんだけど、手法にがっちりリンクした映画の内容自体も結構自分好みです。劇中に登場するデジカメのカクカクした(本当にコマ撮り状態の)プレイバック画面が、実世界の見え方と等しく、あるいはそれ以上に「スムーズにリアルに」見えるということが、主人公の心情を巧みに代弁しているように見えた。カメラ使ってる話に弱いねどうも。
もうひとつ、
The Sad Song by Fredo Violaはデジカメの動画撮影機能(15秒)で撮ったやつを再構成した作品らしい。これは映画というよりWEB公開用の映像作品だけど。
ムービーキャメラを使わない、モーションコラージュとでも言えそうな作品がけっこう出てきたようで。
前から、例えば携帯電話の動画撮影機能なんかを使って作品にならないかなと思っているんだけど、誰かやらないですかね。
01/17/06 | Category 感想
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