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市川準監督 追悼


9月19日の昼頃、インターネットのニュースで市川準監督の訃報を見て、目を疑いましたが、その後最新作の配給会社の方と連絡がとれ、本当に亡くなったのだということを知りました。

7月にPFFのパーティで、隅っこで所在なげにしていたところ、突然肩を叩かれ、驚いて振り向いたら市川監督でした。咄嗟に状況が飲み込めずあたふたしながら、2003年の夏に撮った『トニー滝谷』、そのメイキング『晴れた家』の話を少しだけしました。作品の評判などを訊かれ、二三言葉を交わして別れたのですが、もちろん2003年の時と何もお変わりないようでした。「僕はあれ、照れくさいんだよね」と、シャイな様子で微笑んでおられたのが印象的でした。

あの夏は人生一の日焼けをして、いまだにあの夏以上に色黒になったことはありません。日焼けのひりひりとした痛みと一緒に、風と砂ぼこりの吹き抜けるセットや、遠くの空の稲妻、監督の持っていた金色のマイクのことを思い出します。陽が落ちる時間ギリギリのショットで見られた監督のまなざしにゾクゾクして、思わずクローズアップで延々とビデオを回してしまったのです。

僕が知っていることは『トニー滝谷』の撮影現場のことだけで、ほとんど語れることはありません。ただビデオの撮影と編集を通して、演出について、スタイルについて、俳優との関係性について、詳しく学ばせて頂いた初めての映画監督が市川準監督でした。本当に感謝しています。

心よりご冥福をお祈りいたします。

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