ヘビロテはある朝突然に。
風の歌を聴け ORIGINAL LOVE 田島貴男 東芝EMI 1998-09-23 by G-Tools |
オリジナル・ラブが「渋谷系」だったころ、自分はようやく小沢健二を聴きはじめたりで、全然ついていけてなかったし、あまり興味もなかった。今でもちゃんと聴いたことがない。
にもかかかわらず一曲だけ、どうしても気になる曲があった。気になってるくせに曲名もわからないし、曲調もおぼろげな記憶しかなかった。ただ、なんとなく景気がいい感じ。勇壮な言葉使い。
学生時代、何の集まりだったか全く記憶にないのだけど、横浜線の相原にあった友人の家に数人が集まっていて、そこで漠然と流れていたのがオリジナル・ラブだった。アルバム名はわからない。その某アルバムの、該当曲が流れ出した瞬間、「お、これ名曲なんだよなあ」とKさんが一緒に歌いだした。確かKさんはキャップを被っていて、その声は尾崎紀世彦ふうのやけに響きのいい歌唱法で、その唐突さに笑えたものの、実際に名曲だったかどうかは判別しかねた。Kさんのインパクトが強すぎて、肝心の細部を覚えそこなったのだった。
その時CDを借りておけばよかったのだが、そういうことを思い付かず、それっきり忘れた。オリジナル・ラブを聴いてみよう、ということも思い付かなかった。でも、バンドの名前を見るたびあの時のKさんの「いい声」と、えーとなんか勇壮な感じ、だけが想起された。そうだ、あの曲を探さなければとその時々に思うのだけど、いずれも機会を逸し続けた。
それからだいたい10年。文明の利器(iTMS)によって最近ようやく判明したその曲は「風の歌を聴け」というアルバムに入っている「フィエスタ」だったのであって、景気がよく勇壮、という漠然とした記憶が試聴機能によってようやくはっきりしたのだった。
「フィエスタ」は自分がiTMSで最初にダウンロードした曲である。今もこの文章を書きながら何度もリピートしている。昼間だって作業をしながら聴きまくっていた。なるべくいい声で一緒に歌ったりしながら。唐突に「フィエスタ」が大好きになったのである。
手間をかけて探していたら、もっと好きになっていたのだろうか?
いや、この場合は、10年くらい前に振られた伏線がようやく成就したという感じかも。何気ない日に発生した伏線は何気なく解決するほうがいい。もう年月が経ちすぎて、解決してすっきりしたという感じが一切ない。ただほんとうにこの曲は名曲だあああああ、ということだけがヘビーローテーションのひみつ。